男性不妊

2年以上妊娠しない状態は「不妊症」

日本産科婦人科学会では、定期的に夫婦生活があって避妊をしていないのに、2年以上妊娠しない状態を「不妊症」としています。

不妊症はとかく女性側の問題として捉えられがちですが、実際に妊娠するのは女性であっても、妊娠という出来事は女性の卵子と男性の精子が結びついて、初めて成立するものです。

カルテ

不妊の原因は男性にも女性にもほぼ同じ確率であります。

近年、食生活や生活環境の変化から成人男性の精子数が減少しているという研究結果が報告されており、WHO(世界保健機関)の発表によれば、精子の運動率も20年前と比べて80%から50%にまで低下しています。

つまり、元気な精子をつくれない男性が確実に増えているのです。

男性不妊は決して特別な出来事ではありません。極めてデリケートな問題であるがゆえ周りに話さない人が多いだけで、実はご夫婦一緒に頑張って取り組んでいるという方もたくさんいます。

男性不妊の主な検査

基本検査の種類
検査の種類 内容
精液検査 マスターベーションで採取した精液から精子数や精子運動率をチェックする。
精子生存性検査 精液中に動いていない精子が多い場合、その精子の生存を判別する。
精液培養検査 精液検査で白血球が多くみられる場合、細菌の種類を調べる。
尿検査 採尿し、尿糖や尿蛋白、赤血球、白血球の数を調べる。
尿中精子検査 無精液症や精液減少症の場合に、射精後の尿を採取し、膀胱に精子が逆流していないか調べる。
ホルモン検査 採血して、血中の男性ホルモン値、卵胞刺激ホルモン値、黄体化ホルモン値、プロラクチン値などを調べる。
抗精子抗体の検査 精液の状態から、精子に対する抗体の有無を調べる。
フーナーテスト 女性の排卵日に合わせて性交した後、女性の子宮頸管粘液を採取して、その中にいる精子の状態を調べる。
陰嚢部超音波検査 陰嚢部に超音波をあて、精巣容積や腫瘍の有無などを調べる。
精密検査の種類
精密検査の種類 内容
精巣生検検査 (無精子症や乏精子症の疑いがある場合)陰嚢を1cmほど切開して精巣の組織を採取し、造精機能を調べる。
精管精巣造影検査 (精管通過障害の疑いがある場合)陰嚢の一部を切開し精管に造影剤を入れて、X線撮影し、精管の様子をチェックする。 染色体検査精液中から運動精子を数百匹ほど選び、1匹ずつ性染色体を調べる、もしくは、血液中のリンパ球を培養して染色体を調べることによって、性染色体や常染色体の異常を調べる。
遺伝子検査 (高度の乏精子症や非閉塞性の無精子症の場合)Y染色体の欠失、先天性精管欠損症による嚢胞性繊維症の責任遺伝子との関係を調べる。
精子尾部検査 (生存しているが動かない精子が多い場合)電子顕微鏡で精子の尾部を観察し、異常の有無を調べる。

炎症や感染症などが原因の場合は、薬剤治療によって自然妊娠が可能になるケースもあります。

しかし、男性不妊の90%を占めている「造精機能障害」は、原因不明のものが大半であり、現在のところ、根治できる治療法や効果的な薬剤がありません。

子供と男性

また、男性ホルモンの欠乏が認められる場合はホルモン剤が投与されますが、長期の使用が、逆に、造精機能を悪化させることがあるので、抵抗があるという人もたくさんいらっしゃいます。

そのため、男性不妊のほとんどが、体外受精や顕微授精といった高度な生殖補助医療の選択を余儀なくされています。

さらには、生殖補助医療を受ける際にも、数少ない精子の中から、質のよい精子をなんとか選び出して、施術に挑んでいるという厳しい現状にあるのです。

男性不妊の原因別グラフ
造精機能障害の種類
造精機能障害の種類 内容
精子減少症 精液1ml中に精子が2000万匹以下の状態
乏精子症 精液1ml中に精子が1000万匹以下の状態
精子無力症 精子の運動率が悪く、精子運動率が50%以下の状態
奇形精子症 奇形の精子が多く、正常形態精子率が30%以下の状態
無精子症 精液中に精子が1匹もいない状態
副性器障害

精巣上体や前立腺、精嚢腺などの副性器が炎症を起こし、精子の運動率を低下させている状態です。

特徴として、精液中に白血球が増加します。主な原因は、クラミジアや結核菌の感染です。

精路通過障害の種類
精路通過障害の種類 状態
精索静脈瘤 精索静脈瘤精管の近くを通っている静脈の流れが悪くなり、うっ血して、瘤(こぶ)が出来た状態
閉塞性無精子症 精液1ml中に精子が1000万匹以下の状態
精子無力症 閉塞性無精子症精管の一部が欠けていたり、狭くなっているため、精子が運ばれず、「無精子症」になっている状態。先天性の場合や、外傷や炎症の後遺症で起こる場合があります。
精巣上体炎 精巣上体炎結核や性行為感染症などによって副睾丸炎を発症し、精管が塞がっている状態。高熱が出たり、陰嚢が肥大化したりします。
膿精液症 膿精液症精液1ml中に、白血球が100万個以上認められる場合。精子が白血球に傷つけられてしまうため、不妊に陥ってしまう。
性機能障害の種類

勃起障害(ED)勃起が起こらず、性行為が行えない状態。糖尿病などから起こる身体性のものと、ストレスや緊張などから起こる精神性のものがあります。

射精障害勃起は起こるが射精出来ない状態です。誤ったマスターベーションにより膣の刺激で射精できなくなってしまう「膣内射精不能」、射精に至るまでの時間が早過ぎて膣内でうまく射精が行えない「早漏」、逆に遅過ぎてうまく射精が行えない「遅漏」、膀胱に射精してしまう「逆行性射精」などがあります。

男性不妊の治療薬

男性不妊の治療では、造精機能障害・性機能障害といった男性不妊の種類や症状のレベルに応じて、薬が選ばれ、投与されます。

精子数・運動率が低い場合に使われる薬

精液検査の結果で、精子の数や運動率の低下が確認された場合は、まず、漢方薬・ビタミン剤で様子をみます。だいたい3ヵ月ぐらい試して、改善されなかった場合は、ホルモン剤を試します。

基本的に、「精子の数や運動率の低下に効果的な薬」というのはないといわれており、いずれの薬も“試してみる”という感覚で処方されるようです。

よく使われる漢方薬
漢方の種類 処方目的 副作用
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 精子の運動率の向上・疲労回復・体力増強 胃の不快感・食欲不振・吐き気・下痢
牛車賢気丸(ごしゃじんきがん) 精子数の増加・体力増強・冷え解消 胃の不快感・食欲不振・吐き気・腹痛・下痢
八味地黄丸(はちみじおうがん) 精子の運動率の向上・体力増強・足腰の冷え解消 胃の不快感・食欲不振・吐き気・腹痛・下痢
よく使われるビタミン剤
ビタミン剤の種類 処方目的 副作用
メチコバール(ビタミンB12製剤) 造精機能の促進・末梢神経の働き向上 吐き気・下痢
ユベラ(ビタミンE製剤) ホルモン分泌の正常化・血液循環の正調 胃腸障害
L-カルニチン(アミノ酸製剤) 精子の運動率の向上・基礎代謝の向上 下痢
カリクレイン(アミノ酸製剤) 精子の運動力の向上・血液循環の促進 胃腸障害
よく使われるホルモン剤
ホルモン剤の種類 処方目的 副作用
クロミフェン製剤 男性ホルモンの分泌促進・造精機能の促進 吐き気・頭痛・発疹・長期使用による造精機能の悪化
hCG製剤・hMG製剤 ホルモン欠乏時のホルモン補充 吐き気・頭痛・発疹・長期使用による造精機能の悪化

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